電波暗箱における無線通信時の再現性改善のポイントを確認しておきましょう。

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電磁波測定や無線通信試験等で電波暗箱を使用しているにも関わらず、測定結果が毎回異なる場合や、測定値が絶えず安定していないなどの問題が往々にしてあると思います。  

この問題に対し、改善の可能性があるポイントが存在します。そのポイントについて下記にて解説していきます。

再現性改善のポイント

  1. 電波暗箱内での測定している位置
  2. 測定アンテナ・被測定物の位置と固定

1.電波暗箱内での測定している位置について

測定している場所が電波暗箱内壁近くの場合は、電波暗箱内壁に設置されている電波吸収体の性能が下記理由により満足には発揮することが出来ないことがあります。
ここでは、一般的に多く使用されている誘電性吸収材(=ウレタン系電波吸収体)を例に説明します。
このタイプを電気的等価回路モデルに表すと、含有カーボン自身の抵抗とその抵抗間の静電容量が複雑に結合した形として考えることが出来ます。周波数が高くなるにつれて、反比例してこの回路のインピーダンスが低くなり、抵抗に電気が流れるようになります。結果として抵抗で電磁波エネルギーが熱エネルギー変換することで減衰します。
このときの設計条件は電磁波の波動(特性)インピーダンスが約376.6Ω=遠方界(=平面波)になっています。よって、電波吸収体表面より距離にして約λ/2π以上離すことが吸収性能を発揮する為に必要になります。

2.測定アンテナ・被測定物の位置と固定について

測定アンテナと被測定物間距離は遠方界=平面波になる距離以上かつ、フレネルゾーン(送受信の2点を中心軸とする回転楕円体の領域)内に障害物が無い状態が安定的な通信が出来ることは周知の事だと思います。
前述により、電波暗箱内壁の近くの信号源では電波吸収体の吸収性能が劣化します。反射波が強ければ、受信側では直接波との合成波になります。伝搬経路長が異なる2つ以上の波が合成されれば、位相のずれにより直接波に対し合成波の振幅・位相は異なるものになります。
また、電波暗箱という限られた空間の中では、否応なく反射が起こり、場所(位置)によっては、複数の反射波により、複雑な波形となった合成波(フェージング状態)になっている可能性があります。この様な状況下で、送受信アンテナがそれぞれ定位置に固定されていなければ、毎回測定値が異なるのは容易に想像が付くと思います。

上記を踏まえてMY1520を用いて簡易実験

MY1520内で対向させた2つのスパイラルアンテナを一定距離(150mm)で固定し、周波数2GHz~6GHz送受信させました。そのときの測定している場所(位置)が電波暗箱内の中央付近と内壁近傍で行っています。

グラフ:測定値による誤差

上記結果グラフより、オープンエア(赤線)に対し、電波暗箱中央(青線)は、全周波数帯域で受信レベルがほぼ一致していますが、電波暗箱壁側(緑線)は、周波数約2GHz~4GHz付近で受信レベルが約3dB~1dB程低くなっています。 スパイラルアンテナは指向性がある(ビーム幅約80°・typ)にも関わらず、これだけの誤差が発生してしまいました。
上記ポイントを見直せば、無線通信の再現性改善につながる可能性があります。

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